[イベントレポート]シンポジウム「森を走ろう」-トレイルランニングの現状と課題

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シンポジウム「森を走ろう」~トレイルランニングの現状と課題
日時:2010年12月26日(日) 10:00~15:30
場所:立正大学大崎校舎
主催:日本オリエンテーリング協会(JOA)・ランニング学会
後援:日本山岳協会
協力:立正大学・日本アドベンチャーレース協会

日本オリエンテーリング協会とランニング学会が主催する、トレイルランニングのシンポジウムへ行ってきましたので、そのレポートを書いておきます。
会場は大崎駅近くの立正大学の教室。ランニングとは関係ありませんが、先日、サッカー検定を受けに来た場所です。

来場者は百数十名ほどでしょうか。
トレイルランナー、登山者、オリエンテーリング競技者、ランニング系のイベントを運営をされている方など、様々な方が来場しているようでした。後援が日本山岳協会、協力が日本アドベンチャーレース協会であるなどしており、告知がそもそもそれらの団体中心だったためではないかと思います。
このイベントに関連する団体名の中に「日本トレイルランニング協会」の名前がないのですが・・・まだ設立されたばかりで力がないということなのでしょうか?帰ってからこのことに気がついたので聞けませんでしたが、少なくとも絡みは少ないのでしょう。

イベントは2部構成となっていましたので、その内容を簡単にまとめます。

第1部:シンポジウム

●基調講演:村越真(JOA専務理事)「アウトドアスポーツの歴史に学ぶ」

 内容:以下の3つのポイントについて問題提起

  1. 地域・環境への影響
    ・登山道の荒廃(トレイルの複線化、土壌硬度の変化など)
    ・トレイルランニングの大会による登山道の荒廃の影響については、2,000人規模の大会では重大な影響は見られない
    ・環境配慮の意識としては、トレイルランナーも登山者も大きな違いはない
    ・意図的なゴミ放置はマレである
  2. 異なる活動者との摩擦
    ・MTBが高尾から締め出される、フリークライミングが排便処理で問題になったなど事例
    ・登山者とトレイルランナーの摩擦が言われるが、登山者同士でも同様に摩擦はあり、特別なことではない
    ・トレランはMTBのように排除されないように気をつけなければいけない
  3. 安全への配慮
    ・登山者とトレイルランナーの安全配慮への意識の差は大きい(携行物や危険回避など)

●パネルディスカッション

 コーディネーター:山西哲郎(立正大学教授、JOA会長)
 パネリスト:鏑木毅、田中正人、杉本憲昭、番場洋子

 まず最初にパネリストがそれぞれ15~20分程度でトレイルランニングの課題などについて話し、最後にパネルディスカッションという形式。それぞれの講演内容は以下の通り。

  1. 杉本憲昭(神奈川県山岳連盟副会長)
    ※NPO北丹沢山岳センター理事長、北丹沢耐久レースなど5つのレースを主催し、山小屋などを運営
    ・丹沢については、表丹沢以外はほとんど人が来なくて営業にならず、ゴーストタウン化している。
    ・登山人口も減り、このままだと荒廃していくので、トレランのレースをきっかけに山の再生、地域振興を図ろうとしている。
    ・トレランの憲法のようなものを作りたい(マナーなどのルール作り)。
    ・参考として、陣馬山トレイルについての県のアンケート結果(レース当日に一般登山客に対して調査)を発表。
      >レースを知っていればコースを変更したか(Yes50%、No50%)
      >トレランレースについて→実施を推奨する(60%)、条件付きで推奨する(30%)となり、多くの登山客はトレランのレースに好意的である。尚、他のレースでの調査でも同様の結果であるとのこと。
  2. 鏑木毅(トレイルランナー)
    ・登山は"being"、ランニングは"doing"、それらを足したものがトレラン。
    ・トレランを機に、自然環境保護の意識を高めてもらいたい。
    ・自分が主催した神流トレランのように何もないところでできるのがトレランの大会。限界集落の活性化、昔あった道の再生なども図れる。
    ・ファストトレッキングなど、登山とトレランの間のアウトドアスポーツに広げるのもいい。
  3. 田中正人(アドベンチャーレーサー)
    ・アウトドアスポーツで、人間のちっぽけさ、自然の中での関わりに気付いた。大事なことは、
      1.死なないこと、2.自然環境を守る、3.他者との関わり
    ・自然の保全と活用について、トレランは問題があると聞くが、環境省の役人でもどこに線引きをするのか持ってない。
    ・トレランは初心者も多く入ってくるので、マナー・自己責任・ケガの危険性など、多くの人に伝えることができる。
  4. 番場洋子(オリエンテーリング競技者)
    ・私にとってのトレランの魅力はレクリエーションと練習。
    ・ランニングに比べて手軽さがなく、手頃な短いコースがなく初心者も誘いにくい。
    ・平らで走りやすい林として、オリエンテーリングのテレインの常設コースなど利用すればいい。

 上記の各講演の後のパネルディスカッションの内容
 (誰かがテーマを出して、他のパネラーが意見を述べていく形式)

  1. 初心者向けの距離の短い大会が少ないが、デメリットがあるのか(番場)
    ・初心者向けは人が集まらない。(杉本)
    ・里山を活用した初心者向けの大会などあってもいい。(鏑木)
    ・「ロング化」がトレランがブームで終わらないポイント。競技が旅になり、地域との関係も生まれる。(田中)
    ・ロマンもいいが短いのも必要なので、私は9kmで1500円の大会など実施している。(村越)
  2. 登山人口は約10万人、あと5~10年でさらに減って組織が壊滅するかも。トレランをきっかけに再生したい。(杉本)
    ・スタイルが多様化している、山岳関係者もその対応が必要。(田中)
    ・山へ行く人が少なくなるのは文化的に問題があり、トレランなどで若い人が山を知るのは文化の継承としても意味がある。(鏑木)
  3. レースの課題は?なぜただの「トレラン」ではなく「レース」の必要があるのか?(来場者からの質問)
    ・組織のルール伝達のために意味がある。集合体として伝える必要性がある。(杉本)
    ・レースはハレの場であり、モチベーションの場として活用していきたい。マナーなど伝えることもできる。(鏑木)
    ・たくさんの人が走ることの問題点はよく聞く。色々な人が主催している状況だが、上信越では以前に指針が作られ、それを作った人が今は中央へ行っているため、今後は規定ができるのでは?これらに意見にするには、組織で対応する必要がある。レース主催者の組織がいいのかどうかは分からないが。(田中)
    ・トレランとレースの二分ではなく、多様な関わりをすべき。(村越)
    ・私は一人の方が楽しいが、レースは入口としては必要。東京マラソンのように。(番場)

【第2部:分科会】

 以下の4つの分科会に分かれました。
  a:ランナーのための森の走り方
  b:ナヴィゲーションスポーツの魅力
  c:森の中のイベントの作り方
  d:地域・環境とランニング・スポーツ

 私はイベントとしてどのような視点で作られているかなどに興味があったので、「分科会c:森の中のイベントの作り方」へ参加しました。司会の村越真がアウトドアスポーツの定義(自然、専用施設なし等)をした後、話題提供者2名がどのようにイベントを作っているかを話す形式です。

  1. 話題提供者1:木村佳司(長野で多くのオリエンテーリングイベントを主催)
    ・「自分が楽しいと思えることはみんなも楽しい」をモットーに、オリエンテーリングやロゲイニングのイベントを数多くプロデュースしている。
    ・規模は1000名ものから50名程度のものまで様々だが、それぞれに特徴をもたせるようにしている。
      例:御柱祭とタイミングを合わせる、避暑地、コースを毎年広げる、最高所、最長距離、最大規模、など。
    ・協力者が求めるものは、地場活性化、集客、利用実績など様々だが、それをヒアリングし、プランニングにつなげて実行する。小規模からまず始めてみる。
  2. 話題提供者2:斉藤翔太(日本学生オリエンテーリング幹事長)
    ・大学サークル主催大会として毎年行われている東大OLK大会を事例に説明。
    ・1年前から準備し、地元との渉外、公民館などを借りて10数名で泊まり込んでの数回の調査などを経て実施。
    ・オリエンテーリングの参加者(サークル加入者)が減ってきているのは課題。
  3. 村越真(JOA専務理事)※司会ですが自身もイベント実施しているので事例紹介
    ・有度山トレイル三昧を例に説明、自分の近くにいいコースがあるのを見つけて実施した。

以下は会場からの質問

  1. メディアにもっと載ればいいと思うが、その対応は?
    ・対応する人が必要という問題がある、パートナー(ショップや団体等)がいれば任せる。メディア対応は手間がかかり、効果は薄い。役所の記者クラブへの投げ込みは有効。(木村)
    ・トレランは専門性が高く、山を走るのは変わり者という意識が一般にはあり、取り上げられにくい。(来場者のPR会社の人の話)
  2. 横のつながりなどやらないのか?読図などできると楽しみが広がる。
    ・読図のセミナー的なことはよくやっている(村越)
  3. イベントの準備期間、マニュアル有無、地元の人の参加の工夫について
    ・2~3ヶ月で準備、マニュアルはない(地図作成などのノウハウはマニュアル化できない)、地域振興はパートナーにまかせている(アスリート向けと地域向けは分けている)
    ・1年間で準備、マニュアルは前年のものなどを引き継いでいく
    ・スタート期間は分からないが直前の準備は3~5ヶ月、マニュアルは協力者向けにはある、地元の人の参加は期待していない(もともと競技人口が少ないから)

  最後にアドベンチャー・ディバズの宣伝を担当する人がPRし、女性を集めるためにどうすればいいかなど逆に質問されていました。

以上、トレラン(レース)やオリエンテーリング開会の実情など、色々聞くことができて有意義なイベントでした。
私が意外に思ったのは、オリエンテーリングなどトレランとあまり関係なさそうな参加者が多かったことなのですが、アウトドアで競争するというスタイルが同じであり、どちらかを入口にして、別の競技へ広がっていくことも多いようです。私はマラソンの練習がてらトレランをやってみたら面白くて、トレランが主になりつつあるという流れですが、今はロゲイニングにも興味はありますので、そうやって広がっていくものなのでしょう。
トレランは今はマラソンブームのネクストステップということでブームになっていますが、オリエンテーリング、登山といった団体は、このトレランのブームに期待している部分がかなり高いのだなと思いました。これをもって「トレランの可能性」というタイトルがつけられたような気がします。
ただ、ロードのランニング→トレラン→オリエンテーリング or 登山 、という順でマニアックになっていくものなので、実際のところはせいぜいトレラン止まりが大半なのではないでしょうか。手軽さも薄れてきますからね。今のところは、トレランの大会などではあまり他競技のチラシなども見ないので、少なくともトレラン及びランニング関連の大会やメディアでもっと告知する必要はあるでしょう。
トレランの大会自体については、自然環境へのダメージも大きくはないようで、ランナーの意識やマナーも登山者と大きな違いはなく、問題があると言われている割には実情はそれほどでもないようで、山を大勢のランナーが走るということでイメージ的に悪く思われているようです。ランニングと比べれば一般的ではなく、特殊な人がやるスポーツという意識があるので、余計にそう思われるのでしょう。
もっと手軽にできるようにする、少なくともランナーには一般的なものとして広める、そういった普及活動が必要ではないかと思います。とはいえ、トレイルランナーとしては、参加者が増えすぎるとレースのキャパ的に(参加者数やコースの渋滞など)厳しいものがありますが。

関連リンク:
日本オリエンテーリング協会
ランニング学会
日本山岳協会
日本アドベンチャーレース協会

今回のイベントは関係ありませんが、以下もリンクを貼っておきます。
日本トレイルランニング協会
 

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